Yes We Can!

後輩から突然深夜に電話を受ける。

私の元部下であり、今では大所帯の部下を束ねるマネージャーを務めている営業部長からである。

その場は出れず、翌日電話してみるとどうやら何か深刻そうである。

私:「昨日深夜に電話貰ったけど何かあったのか?」

後輩:「いや〜。実はちょっと相談したくて・・・」

私:(恐らく進退問題なのかな?と思いつつ・・・)「仕事の進退に関してかな?」

後輩:「そうなんですよ・・・。実は中国赴任を命ぜられてまして。。」

私:「いいねエ。むしろ俺が行きたい!(笑) ところでそれのどこが悩みなの?今君は28歳独身で最もフレキシブルな時なんだろう?」

後輩:「そうなんですけど、未開のことなので、経験が無いからどうしようかと思ってます。。」

てな具合。

この後輩は入社当時からとても純粋で真面目。若くして多くの経験を経た経緯があり、実務経験は長けているものの、同じ職場にい続けていることにより、視野が若干狭くなっていることを私も懸念していた矢先の話であった為、今回の辞令は彼にとってまたとないチャンスだと思った。

私:「30代もイケテルビジネスマンになってたい?」

後輩:「はい。もちろんです!やっぱ行くべきなんですかね?」

私:「Yes We Can.」

といった具合である。私自身も大学時代N・Yでインターンシップをしたり、サラリーマン時代フロリダで研修を受けたぐらいのかじりの経験はあるものの、まともに海外赴任した経験は私には実はない。だからまたとない経験のチャンスを与えられた彼の背中を押してあげることが私の役割だと思った。

彼に限らず、人は基本的にコンサバであり、変化を嫌う特徴がある。これは恐らく生理現象に近いものではないかと思う。その状況からどれだけ前を向いて未開の地を歩めるか?これこそが生きる力を養う必要要素であると思う。

私自身今までのビジネスライフにおいて、3回のターニングポイントがあった。それぞれのタイミング全てが思惑通りに実行したものでは決してない。お先真っ暗な未開の地に飛び込んだ時だってある。中にはもっといいやり方があったのではと思えることが無くはないが、でも今だから言えるのはチャレンジしてきたことそのものが今の私のかけがえのない財産になっているということ。勇気ある決断こそが経験を積み、その人の「生きる力」を創りだすと言えると思う。

全く分からなくてもドキドキするぐらいがちょうどいい、20代、30代はそれでいいと思う。

私もN・Yのインターンシップを希望して渡米した時も、何も仕事や言葉がわからなくても、ウォールストリートをスーツでスターバックス片手に歩くと「自分は何でも出来る」と大きな勘違いをしていたことを思い出す。何も分かってなくてもとにかく新たな経験に鼻息荒く取り組もうとしたその行為が『今』に通ずる部分が少なからずある。他にもそんな経験が幾多とあったがどれも今振り返ると素晴らしいプロセスであったと思っている。

年齢的にも私がバズーを創業した時と同じ歳を迎える彼が、最高にロマン溢れる人生を送れることを強く願う。


『熱血法人バズー』 
熱血社長 森下洋次郎